ここでは、税理士の業務と経営コンサルタントの業務との違いや、税理士が経営コンサルタント業務に携わる方法などについてくわしく解説しています。経営コンサルティングも行える税理士になりたいと考えている方や、クライアントから選ばれ続ける付加価値のある税理士になりたいと考えている方は、ぜひ最後までチェックしてください。
まずは、「経営コンサルタント」と「税理士」のそれぞれの業務内容の違いについて、しっかりと理解をしておきましょう。
経営コンサルタントは、主に企業の経営課題の解決に向けたアドバイスを行う業種。経営戦略、事業再生、資金調達などについて、大小様々な相談対応や助言を行うのが経営コンサルタントの仕事になります。
ただし、経営に関するテーマは非常に幅広く、1人のコンサルタントが企業の様々な課題に対して適切な助言を簡単にできるわけではありません。そのため、基本的に経営コンサルタントは自分の専門分野を持って業務を提供することが一般的です(中小企業向けのコンサルティングの場合、1人のコンサルタントが全分野に対応することもあります)。
主な専門分野としては、上述の経営戦略、事業再生、資金調達のほかに、IPOや事業承継・M&A、財務・経理、人事、DX、特定業種(医療系、飲食系など)など。それぞれの分野において情報収集の上、短期的・中期的・長期的な戦略立案を打ち立ててクライアントを導きます。
税理士は、主に税務や経理に関する相談や業務代行を行う業種。具体的には、①税務相談、②税務代理、③税務書類作成、④記帳・給与計算等の経理代行、⑤経営コンサルティング・アドバイザリー業務、などを行っています。これらのうち①②③の3業務については税理士の独占業務と規定され、大半の税理士の中心的な業務ともなっています。
なお、最近では会計ソフトなどのツールが高度化してきたこともあり、以前は税理士への依頼が当然だった業務について、経費節減も兼ねて自社で対応する例も増えてきました。結果、税理士事務所には決算報告書の作成代行のみという依頼も増加しています。 経営コンサルタント業務も兼務する税理士が増えてきたい背景には、そのように税理士の本来業務の減少があることも否めません。
経営コンサルタント業務を行っている税理士は多々存在しますが、上述の業務内容を振り返っていただいても分かる通り、両者の仕事は明確に異なります。税理士は税務相談や税務代理などが主な仕事であることに対し、経営コンサルタントは経営課題の解決に向けた相談対応・助言となります。
また、業務内容のほかにも資格に関する大きな違いがあります。税理士の場合、難関国家資格として知られる税理士の資格を取得しなければ業務を行えませんが、経営コンサルタントには特別な資格が必要ありません。本人が「経営コンサルタント」と名乗れば、その日からその人は経営コンサルタントです。
もちろん、何の知識もなく経営コンサルタントの業務を行うことは不可能。全ての経営コンサルタントは何らかの専門的なバックグラウンドを持ち、その専門性に応じたコンサルティング業務を行うことが一般的です。
税理士の資格を持ちながら経営コンサルタントとして活躍している人は大勢いますが、税理士の資格を持っているという理由だけで、クライアントが満足できるコンサルティングを提供できるわけではありません。税理士の有資格者とは言え、経営コンサルタントとして活躍するためには一定のスキルが必要となります。
経営コンサルタントを目指す税理士の方は、以下でご紹介する4つのスキルに注目してみましょう。
経営コンサルタントは、経営者に対して経営の助言を行う立場なので、経営に関する幅広い知識を持っていることは業務の大前提となります。税理士業務も経営の中枢に入って行うことがありますが、基本的には税務会計に特化した業務となるため、経営コンサルタントとして活躍するためには、改めて経営の勉強をする必要があるでしょう。
経営に関する全般的な知識とあわせ、ご自身が携わる予定の業界に関する知識を深めておくことも重要です。経営コンサルティング業務においては、クライアント企業の相談対応・助言だけではなく、クライアント企業が属する業界内での事例などを尋ねられることも多々あるためです。
経営に関する全般的知識、特定の業界に関する深掘りした知識、そして税理士としての専門性を持ち合わせていれば、信頼される経営コンサルタントとしての活躍できるでしょう。
コンサルタントのメインとなる仕事は経営に関する助言ですが、クライアントの心に響く助言をするためには、クライアントの話をよく聞かなければなりません。クライアントの話を十分に聞き、その本音を引き出す力があればこそ、引き続き「困ったときに頼れる経営コンサルタント」として依頼が継続していくことでしょう。
また、クライアントへ適切な助言を行うためには、クライアントからのヒアリングだけではなく、ステークホルダーや外部の人たちからの話もよく聞き、全体を調整する視点から状況分析する必要もあります。経営を取り巻く状況を総合的に整理した上で的確な助言をできる経営コンサルタントこそ、経営者からの深い信頼を勝ち取ることができるでしょう。
経営者は、経営コンサルタントに対して論理的・客観的に納得できる助言を求めています。合理的な助言、と言っても良いかもしれません。 これら経営者が望む助言を構成するためには、物事を論理的・客観的に説明するための情報が必要であり、その情報の大半は数字。すなわち経営コンサルタントとは、数字を根拠とした情報処理能力が強く求められている職種でもあります。
あわせて、最近は規模の大小を問わずあらゆる企業においてDX推進が強い関心事となっています。しかしながら、DXを推進したいにも関わらず、社内全体にIT知識が乏しいため時代に取り残されてしまうような危機感を抱えている企業も少なくありません。
経営コンサルティング業務を提供するにあたり、ITに関連する相談へ発展する可能性は非常に高いことが予想されるため、経営コンサルタントとして活躍したいならば、ITに関する知見を深めておくようおすすめします。
いかに優れた分析をし、いかに優れた課題解決法を構築したとしても、経営コンサルタントに高いプレゼン能力がなければ、その優れた助言内容はクライアントへ伝わりません。伝わらなければ、その助言がクライアントの経営戦略に取り入れられることもないでしょう。結果として、コンサルティングの継続依頼はなくなるかもしれません。
相手のリテラシーを十分に理解し、限られた時間の中で、相手に伝わる言葉を使って的確に説明する力。つまりプレゼンテーション能力は、プロの経営コンサルタントとして活躍し続けるための必要な能力となるでしょう。
経営に関するコンサル・アドバイスできる経営支援税理士という働き方
経営コンサルタントと税理士では、それぞれに主軸とする業務が異なります。
しかし、近年、税理士の主な顧客対象である中小企業の数が減っていることや顧問料単価が低下傾向にあることなどを受けて、同業他社との差別化のために“経営コンサルティング”という付加価値スキルを持った税理士を目指す人も増えています。
会計業務のデジタル化が年々進んでいることを考慮しても、クライアントのニーズに応えて選ばれ続ける税理士になるためには、税務のみに留まらず経営に関する助言を含むコンサルティングも行えるようになることはとても有効な策と言えるでしょう。
税理士・公認会計士・資格勉強中の方に聞きました!
経営支援税理士を目指したきっかけとは?
税理士、公認会計士と一言でくくっても、その働き方は実にさまざま。税務の第一線で活躍する税理士、元公認会計士、税理士の資格取得に向けて励んでいる方に、転職のきっかけをはじめ、経営支援税理士という職業のやりがいについて語って頂きました。
税理士という職を手放すことなく、本来の税理士としての業務を行いつつ経営コンサルタントとしても活躍していける働き方をご紹介します。
現在、働いているところが税務・会計業務しか行っていないのであれば、以下の企業へ転職するのが早道です。
こうした税理士法人やコンサルティングファームなら、本来の税理士業務を行いつつ、経営支援・経営コンサルティング業務にも携わることで上流工程のスキルを身に着けることができます。実際に経営支援・コンサルティングも行える税理士として働く上司や先輩のもとで仕事をすれば、今後の自身のキャリア像や目指すべきところもより具体的に見えてくることでしょう。
税理士の資格は、“税務・税法についての専門家”であることを示す資格。これにプラスして、“経営についての知識を備えていることを示す資格”である「中小企業診断士」の資格を取得することも、税理士兼経営支援・コンサルタントとして活躍するためにおすすめの方法です。
中小企業診断士の資格は、税理士の資格とは違って何らかの独占業務を有するものではありません。しかし、取得すれば、経営アドバイスに必要となる確かな知識を身に付けることができます。
また、中小企業診断士は試験のなかに財務・会計に関する内容が含まれていることから税理士資格保有者なら比較的容易に取得できることも、おすすめする理由のひとつです。
税理士と経営支援の業務を両方できる「経営支援税理士」とは?
税理士が企業の経営コンサルティングも行える知識やスキルを身に付ければ、主な顧客対象である中小企業のニーズにより応えられるようになり、“付加価値のある選ばれる税理士”を目指せます。業務の幅も確実に広がるため、今後の自身のキャリアアップにもつながるでしょう。
そんな経営コンサルティングも行える税理士になるには、先に触れたように、経営コンサルティングにも対応している職場へ転職するのが早道です。
税理士事務所が経営コンサルティングを行う上での困難点について考えてみましょう。クライアント企業に対して、事業計画の数値管理や経営理念のアドバイスなど、税理士事務所が経営コンサルティングサービスを提供する際には、いくつかの課題が存在します。
まず、税理士事務所そのものが組織化されていない場合が挙げられます。全国には約3万もの税理士事務所が存在しますが、そのうち多くは個人事業主が1人で経営していたり、または税理士資格者と数人の事務スタッフで構成されている場合が少なくありません。
一方で、税理士が少なくとも2人以上所属し、支店を持つことができる税理士法人は全国で約3千件に過ぎません。税理士法人が経営コンサルティングを提供する場合、そのアドバイスには説得力がありますが、組織化されていない税理士事務所が経営的なアドバイスを行うのは難しく、難しい状況に陥りやすいです。特に、経験豊富でない税理士が雇用やマネジメントの経験がない中で経営コンサルティングを行う場合、説得力に欠ける可能性があります。
ただし、地方で経営コンサルティング企業がほとんど存在しない場合、小規模な税理士事務所が提供する経営的なアドバイスは、地元の企業経営者にとって重要であり、需要があるかもしれません。開業初期の経験や成功、失敗について率直に語り、地元の経営者との交流を通じて社会的価値を築くこともできます。
ただし、もし税理士資格者が本格的に経営コンサルティングに興味を持ち、その分野でのキャリアを築きたい場合は、資格の強みを活かしてコンサルティングファームに就職することも一つの選択肢となります。
税理士が経営コンサルタントとして成功するためには、独自の知識と経験が不可欠です。経営コンサルタントは資格が必須ではないため、業界には様々な人材が参入します。このため、税理士が際立って活躍するためには、専門的な知識と実績が欠かせません。
税理士が行うコンサルティング業務には、経営計画書の策定、株式公開の準備、M&Aを含む事業承継、海外進出支援、バックオフィスの効率化などが含まれます。これらの業務は税理士業務に密接に関連しており、経営者に対して効果的なアドバイスを提供する重要な要素です。ただし、全ての分野において専門家である必要はなく、税理士が得意とする領域で深い知識を積むことが重要です。
近年、税理士業界では、従来の基盤である顧問業務に加えて、コンサルティング業務や単発サービスを提供する税理士事務所が増加しています。税理士は経営者との頻繁な打ち合わせを通じて信頼関係を築き、経営課題の把握や解決に積極的に関与しています。顧問料の自由化やITによる業務効率化も業界に影響を与え、競争が激化しています。
税理士報酬規程の撤廃により、各事務所は報酬を自由に設定できるようになりましたが、税理士登録者数の増加と中小企業の減少により、顧問料の相場は低下しています。この状況下で、差別化を図るためには、伝統的な業務に留まらず、高い付加価値を提供することが求められています。また、ITの導入により業務効率が向上し、税理士は余力を高度な業務に充てることが可能になっています。
この環境変化により、経営コンサルタントとしての役割を果たす税理士事務所が増加しており、付加価値の最大化に取り組んでいます。
税理士が経営コンサルティングに携わることには、多くのメリットがあります。クライアント企業に対して、税務だけでなく、経営全般にわたる包括的なサポートを提供できるようになります。これにより、税理士はクライアント企業のビジネスパートナーとしての位置づけが強化され、長期的な関係構築が可能になります。
また、経営コンサルティングの知識を持つ税理士は、税務申告や経理業務の効率化だけでなく、経営戦略の立案や業務改善提案など、より高度なサービスを提供することができ、クライアント企業の成長を直接サポートできます。これは、税理士にとっても自身の専門性を高め、市場価値を向上させる絶好の機会です。
さらに、経営コンサルティング業務に携わることで、税理士は新たなビジネスチャンスに触れることができ、自らのビジネスの拡大にも繋がります。経営者としての視点を持ち、クライアント企業の課題を深く理解することで、より信頼される税理士へと成長していくことでしょう。
税理士が提供できる経営コンサルティングサービスは多岐にわたります。主なサービスには、財務分析、事業計画の策定、資金調達のアドバイス、税務戦略の立案が含まれます。財務分析では、企業の財務状況を詳細に分析し、経営者がより良い経営判断を下せるようにサポートします。
また、新規事業計画の策定にあたっては、市場調査から事業計画書の作成までをサポートし、事業の成功確率を高める戦略を提案します。資金調達では、銀行融資や助成金申請など、最適な資金調達方法をアドバイスします。
さらに、税務戦略では、税負担の軽減や税務リスクの管理方法を提案し、企業の利益を最大化します。
これらのサービスを通じて、税理士は企業の経営課題を解決し、持続可能な成長を支援します。税理士による経営コンサルティングは、企業が直面する複雑な経営環境の中で、確かな指針を提供する貴重なサービスと言えるでしょう。
税理士が経営コンサルティングを行う際に直面するチャレンジには、自身の専門外の問題に対処する必要性や、クライアントの信頼を獲得することがあります。
これらの問題に対する解決策として、税理士は継続的な学習と自己啓発に励むことが重要です。経営コンサルティングに必要な幅広い知識を身につけるために、関連するセミナーや講座への参加、専門書の読書などを通じて、自身のスキルセットを拡大しましょう。
また、クライアントからの信頼を獲得するためには、実績の提示と透明性の確保が欠かせません。過去の成功事例を共有することで、クライアントに自身の能力をアピールし、提案の信頼性を高めることができます。さらに、プロジェクトの進行状況をクライアントと共有し、オープンなコミュニケーションを心がけることで、信頼関係の構築に繋がります。
税理士が経営コンサルティングの分野で成功するためには、専門知識の向上とクライアントとの信頼関係の構築が鍵となります。これらの挑戦を乗り越えることで、税理士はクライアント企業の価値あるパートナーとしての地位を確立することができるでしょう。
経営コンサルティングを提供する税理士に必要な資格について、特定の資格が絶対に必要というわけではありませんが、税理士資格を持つことは大きなアドバンテージとなります。
税理士資格は、税務に関する深い知識と専門性を証明するものであり、企業経営において税務は避けて通れない重要な要素です。税理士が経営コンサルティングに携わる場合、税務面から企業の経営を支援し、助言できる能力はクライアントにとって非常に価値が高いとされています。
加えて、中小企業診断士や公認会計士などの資格も、経営コンサルティングを行う上で役立ちます。これらの資格は、経営全般にわたる知識や分析スキルを持つことを証明し、税理士としての専門性に加えて経営コンサルティングの幅を広げることができます。
しかし、資格だけでなく、実務経験や実績も重要です。クライアント企業の課題を解決し、経営改善に貢献した経験は、新たなクライアントを獲得する際の信頼性を高め、経営コンサルティングサービスの質を保証するものとなります。
税理士が経営コンサルティングにおいてクライアントと築く信頼関係は、成功への鍵となります。専門的な知識と経験を活かし、クライアント企業の経営課題に対する的確なアドバイスを提供することで、その信頼は徐々に築かれていきます。
信頼関係を構築するためには、まず税理士自身がクライアントのビジネスに真摯に向き合う姿勢が必要です。クライアントのビジネスモデルを深く理解し、経営戦略に合わせた税務や財務のアドバイスを行うことが重要となります。
また、コミュニケーションの質も信頼関係構築において重要な要素です。定期的なミーティングの開催や、クライアントからの問い合わせに対する迅速かつ丁寧な対応を心掛けることで、クライアントからの信頼を得ることができます。
さらに、透明性の高い情報共有も信頼関係を深めるために欠かせません。クライアントに対して、提案の根拠となるデータや分析結果を開示し、経営コンサルティングのプロセスを共有することで、クライアントの理解を促進し、共感を得ることができます。
このように、税理士がクライアント企業との間に強固な信頼関係を築くことで、経営コンサルティングの成果を最大化し、クライアント企業の持続可能な成長を支援することが可能となります。
BIG4出身の方も活躍中!税理士法人スーゴルとは?
当サイト「税キャリ」の監修に応じてくれた税理士法人スーゴルでは、中小企業に経営に関する支援・サポートをする業務ができます。会計税務を軸とした経営支援を行っている会社で、“利益を出せるいい会社”を多く生み出すことをミッションとしています。
税務顧問業務・経営コンサルティング業務の両方を専門としているため、税理士法人スーゴルなら両分野のプロフェッショナルとしてスキルを磨いていくことができます。「税理士としてのスキルを生かしながら、経営にも深く携われるような働き方をしたい」という方にぴったりの環境です。